すっかり日が暮れた頃、ちょうど帰宅時間となった娘を、玄関先まで出迎えました。
「おかえり!」
声をかけると、いつも「ただいま」と返事があります。
調子のいい日は、明るく元気な声で。
いまいちな日は、ワントーン低い小さな声で。
律儀な長女は、気分の浮き沈みがあっても、必ず返事をしてくれるのです。
それが今日は、ただいまも言わずに、目をきらきらさせながら駆け寄ってきて。
「お母さん! 月!」
大きな声で、見て! と言います。
ふり向いたら、まんまるの月が、とても近くにありました。
「今日はすごく月が近いの! 綺麗でしょ。ずっと見ながら帰ってきた」
低い空、庭の木陰に隠れそうなほど間近に浮かぶ満月。
この綺麗さに感動できて、それを味わえて、他人とも共有できる子なんですよね。
我が娘ながら、素敵だなあと思っています。