記憶のひきだし

稲刈りを終えた田んぼから、鳩がいっせいに飛び立った。ばささっ、という羽音とともに、滑らかな曲線を描きながら。 空に並ぶ鳥影を見て、ふ...

びくともしない

うちのむすこ。中学三年生。もう、わたしより背が高くて、力がつよい。 むきあって立ち、手のひらを合わせる。ふんっ、と力をこめて、むすこ...

エピソード12

「さよなら」あの雨の夜、きみはぼくに背を向けた。ぽん、と開いた傘がきみの顔を、すっかり隠してしまっていた。泣いていたのか、微笑んでいたのか...

【詩】秋の夕べ

秋の風は肌のいちだん深いところを通りすぎてゆく 乾いた草の匂い染みわたる鳶の声 傾きかけた太陽が熟れた果実のようにぷつ、と弾け...