「今日、お誕生日なんです」
久しぶりに訪れた、行きつけのカフェ。
10人も入ればいっぱいになってしまうぐらいの、アットホームな空間に、
その日は、わたしを含めて、おひとりさま3人のお客様が。
おいしくランチをいただいていると、隣から、そんな声が聞こえてきたのです。
顔を上げると、暖かそうな上着を羽織ったマダムが、オーナーと話していました。
このカフェ、お誕生月に行くと、デザートをサービスしてくれるんです。
わたしも夏にいただきました。
カットされたケーキが、綺麗にお皿に盛りつけられていて、ろうそくが点いているんですよ!
大人になってからの、ろうそくの灯るバースデーケーキって、なんだか照れくさくて、すごく嬉しい。
自分が「わあっ…!」って嬉しくなった気持ちを思い出して、幸せになって。
お誕生日おめでとうございます、って言いたいな。
ふいに、そう思ったんです。
でも、思い立ったあと、ちょっぴり怯みましたよね…。
それぞれに、おひとりさまを満喫中。
まったくの見知らぬマダム。
わたしはといえば、人見知り歴40年を、ようやく返上したばかりの人間なのです。
だけど。本当に、どきどきしたけれど。
わたしが言いたいと思ったから、言うんだ。って決めて。
デザートが運ばれてきて、マダムがろうそくを、ふうっと吹き消します。
「お誕生日、おめでとうございます!」
わたしはそう言って、拍手しました。
もうひとりの、おひとりさまのお客様も、
顔を上げて、一緒に拍手してくれました。
「ありがとうございます」
ほんのりと頬を赤くして、嬉しそうに笑ってくれたマダムを見て、
それはもう、ほっとしました。
お祝いを言えて、よかった。喜んでもらえて、よかった。
それからわたしたちは、再び視線をテーブルに落とし、
めいめいの料理を味わい、おひとりさま同士に戻りました。
一瞬だけ、ひとりと、ひとりと、ひとりが、3人になった。
カフェでの交差点が、とっても幸せなお昼でした。
