酒井駒子さんの表紙に惹かれて、買いました。

「随筆集」って、うつくしい響きだなと。
エッセイ集、ではなく。
読んでみると、ああこれは確かに、随筆と表現したくなる。
あくまで私的なイメージなのですが、
エッセイは、写真のように切り取られたワンシーンを物語っていて。
随筆は、もうすこし動きがあります。
記憶と場面が、ゆっくりと流れる、絵巻物のような。
この本に収められた物語も、私にとっては、そんな感じ。
木村さんの記憶の断片が、ゆるゆると動いて、
物語のかたちを成している本でした。
帯にも抜粋されている一節、
”すべて物語は本という物質に収められているから、
どれも四角く似たようなかたちをしているけれど、
それは単に擬態しているだけであって、”
そう、これも、そんな本。
リアルにつぶさに描いてゆけば、きっと山あり谷あり、
どきどきはらはらを生む物語、にもなるのだろうけれども。
酒井さんの絵と、木村さんの文章から、
静かな一瞬の息づかいが聴こえるような。
記憶の片隅にある、呼吸を閉じ込めた琥珀のような、一冊でした。
こういう本は、日常のすきまにある、静寂を探して読みたい。
時間の流れかたを、ふっと変えてくれる空気が、好きです。