ごめんね、ありがとう

長男は、わりと好き嫌いが多くて、気に入ったものばかり食べます。

初めての食べ物や、好きではないものに、家で手を伸ばすことは、ほぼありません。

給食だと挑戦するし、何でも食べられるようなので、心配はしていないのですが。

ある日、「お腹すいたー!」と食卓をのぞいた長男、とたんにむくれ顔になりました。

ごはんと、みそ汁と、焼き魚と、野菜炒め。

「好きなのがいっこもない! ごはんいらない!」

それはもう、ひどい剣幕で、こちらも思わず怒鳴りたくなるほど。

…でも、ここは落ち着いて。

「食べたくなかったら食べなくてもいいけど、お腹がすいてもおやつはないよ。ご飯とお汁ぐらい、食べてみたら?」

すると、怒り顔のまま、米だけかきこんで食べ、即座にお菓子に手を伸ばします。

まだみんな食事中だからだめだよ、と注意すると、完全にご機嫌を損ねた様子です。

ソファーを力いっぱい押して私を閉じ込めようとしたり、お姉ちゃんを八つ当たりでポカポカ叩いたり、弟のおもちゃを投げる真似をしたり。

ずっと家族に当たり散らした挙げ句、「誰もおれと遊んでくれない!」と言われて、

「お母さんだって嫌だよ、ごはん作ったのにずっと怒られて。楽しくないから遊びたくない」

私も、結局、怒ってしまいました。

彼なりの気遣い

それでも何とか気持ちを収め、子どもたちをお風呂に入れて、夜の洗濯を始めたのですが。

疲れていたのか、洗濯機を回しながら、うたた寝してしまいました。

ふと目を覚ますと、室内をバタバタ、ごそごそと動く気配が。

顔を上げたら、長男が踏み台につま先立って、せっせと洗濯物を干してくれているではありませんか。

シワシワの服やタオルが、それでも等間隔に、綺麗に吊るされています。

近寄った私に気づくと、長男は「…あんまりうまく干せんかった」と、照れ笑いを浮かべて、次の洗濯物を広げ始めました。

私は長男を抱きしめました。

「ありがとう。お母さん、とっても助かったよ。嬉しかったよ」

こくん、とうなずく彼に、

「ごはん、楽しみだったんだよね。好きなものがなくって、悲しかったんだね」

そう言うと、再び無言で、首を縦にふりました。

…私だって、子どもの頃、夕食が苦手なおかずだと、何だか寂しかったです。

自分が作る側になり、選べたり残したりできるようになったから、忘れていたけれど。

長男は、子どもだった私が内に沈めていた悲しさと同じものを、ただ怒りで表現しただけなんですよね。

一生懸命、手伝ってくれる息子を見て、感情をぶつけてしまったことを、後悔しました。

悲しい気持ちも、ちゃんと受け止めたらよかった。

ごめんね。ありがとう。

でも! 怒りっぱなしで終わらなかったことは、私も長男も、成長したなと思います(笑)。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする