紹介を聞いて、作者を見て、買ってしまいました!
小さな本屋さん・ 比嘉教子 ひがっちさんのおすすめ本です。
【ないもの、あります(クラフト・エヴィング商會)】
“よく耳にはするけれど、一度としてその現物を見たことがない。”
たとえば、「転ばぬ先の杖」「堪忍袋の緒」。
そのようなものたちを、クラフト・エヴィング商會が、
“この世のさまざまなる「ないもの」たちを、古今東西より取り寄せまして、
読者の皆様のお手元までお届けいたします。”
という一冊であります。
タイトルからして、言葉遊びのようなものなのですけれど、
何しろ秀逸なカタログですので、ぜひ直にお読みいただきたいところ!
うまいこと言葉を転がして遊ぶものだと、ひとり相槌を打ちつつ読んでいたら、
“当商會は「ことわざ・慣用句商會」ではありません。”
の文が出てきて、笑いの壺もしっかり取り揃えておられるのね、と。
もしも実際に、店先に並んでいたなら、さわってみるには、ちょっとばかり勇気がいるから、
品物と説明書きを、私はじっくりと読んで回るのだろうなあ。
ああ、でも「おかんむり」と「先輩風」は、
おっかなびっくり手にとって、思わず試しそうな気がします。
この『ないもの、あります』、最初の連載は、なんと1998年だそう。
単行本の発売が2001年、文庫化が2009年、そして重版されているから、
人ひとりが大人になるほどの年月、ずっと読み続けられている本なんですよね。
で、私がいま読んでも、おもしろいんです。
くすりと笑って、思わずうなずく。
久しぶりの和食に舌鼓を打つような、そんな本。
カタログと銘打ちながらも、辞典のようでもあり、処方箋のようでもあり。
とりあえず、一家に一冊おいておけば、いずれ語り草になるかもしれません。
――と、こうしてついついおすすめしてしまうことこそ、
クラフト・エヴィング商會の、思う壺という可能性も、否めません。