「相手目線」と「読者目線」

この言葉は、誰に向けて書いているんだろう?
目の前に思い浮かんでいる、あの人なのか。
それとも、まだ出会ったことのない、誰かなのか。

書きながら見ている景色が、ゆらりとぼやける。
そんなときの私は、「相手目線」と「読者目線」を、行ったり来たりしているように思うのです。

どちらも、大切なまなざし。
でも、ほんの少しだけ、距離感が違っているんです。

迷ったときは、どちらの視点に立っているのか、自分に問いかけてみる。
そうして、言葉の景色を整えていきます。

目次

  1. やさしくて近い「相手目線」
  2. すこしだけ遠くて深い「読者目線」
  3. 似ているようで、別のもの
  4. どちらも大切な、まなざし

やさしくて近い「相手目線」

たとえば、友達にLINEで気持ちを伝えるとき。

「これでちゃんと伝わるかな?」
「傷つけたりしないかな?」

その人の表情や、今の状況を想像して、
目の前にいるような感覚で、言葉を差し出す。

これが、私の「相手目線」です。

今ここにいる、たったひとりに届くように、書く。
反応を想像しながら、リアルタイムのやりとりを描いている。

だからこそ、誤解のないように。
だからこそ、やさしく、丁寧に。
相手が安心して受けとれるように、言葉を紡いでゆくのです。

この「相手目線」は、
お知らせやご案内を書くときにも、あらわれてくる視点です。

すこしだけ遠くて深い「読者目線」

これは、今まさに使っている視点です。

こんなふうに、noteの記事を書くとき。
その向こうにいるのは、まだ会ったことのない誰かが、ほとんどです。

どんな人が、いつ読むのかは、わからない。
それでも、どこかでそっと届いてほしいと願いながら、書く。
それが、私の「読者目線」です。

相手の顔は見えないけれど、
きっとこの言葉が、誰かの希望になる、と信じている。

なので、相手目線よりも、静かに言葉が並びます。
私の伝えたいことを、ていねいに書くけれども、
その人にとって、いちばんいい形で受けとってくれたら、それがいい。

言葉の余白ごと差し出すように、言葉を紡ぎます。

この視点に立つと、読んでくれる人のことを信頼しながら書けるので、
「発信がこわい」という気持ちを、和らげることもできます。

似ているようで、別のもの

どちらも「誰かのために書く」というのは、同じ。
けれど、相手目線と読者目線は、違う場所から、言葉を見つめています。

相手目線は、よりそうやさしさを含んでいます。
届くまでの距離が近くて、プレゼントを渡すときみたいに、気を配る。
すぐに受け取ってもらえるように、誤解のないように、言葉を整えていく。

読者目線は、もうすこし遠く。
星の光のようなものです。

誰かに届くのは、明日かもしれないし、もっとずっと先かもしれない。
それでも、いつか誰かが拾ってくれることを信じて、
言葉を、そっと置いていく。

目の前のあなたに、話しかけるか。
いつか、どこかのあなたに、物語るか。
その違いは、書き手の構えを変えるものです。

どちらも大切な、まなざし

どちらが正しい視点、というわけではありません。
それぞれに良さがあり、使いやすい視点も、人によって違うでしょう。

でも、どちらの視点も、誰もが持ちあわせているもの。

「いま私は、どちら側に立って、この言葉を届けようとしているんだろう」
そう考えると、自分がいま、どちらの景色を目に映そうとしているのかが、はっきりとわかります。

大切なのは、どちらの視点も、自分が選べる。
ということを、知っていることだと思うのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする