言葉の手ざわり

本を、ぱらりとめくった。

そう書こうとして、ふと思った。

私が本のページをめくるときの表現には、「ぱら」と「ぺら」がある。
この2つは、同じ行動に見えて、実は体感覚が違う。

今日は「ぱら」と「ぺら」の、言葉の手ざわりを考えてみよう。

私がページを「ぱら」とめくるとき。
本は、必ず手に持っている。

「ぱらり」なら、指をそっと差し込んで、ある特定のページを眺めている。
とても静かな動き。

「ぱらぱら」になると、同じく指を差し込んだ箇所から、紙を指の腹で送って、複数のページを眺める。
音を重ねるのは、複数形の表現なのだ。

「ぱらっ」だと、動き自体は「ぱらり」と変わらないのだが、スピードが上がる。
紙をめくる動作の歯切れがよくなり、ページを眺めている時間も短くなる。

めくる動きに余韻が残るのが「ぱらり」、
紙の音に余韻が残るのが「ぱらっ」である。

一方「ぺら」のとき、本は手に持っていないことがほとんどだ。

書店に平積みされている本、机の上に置かれた本などを、
表紙を傷めないように、折り目がつかないように、そっと一瞬だけ開いてみる。
これが「ぺらっ」と本をめくる状態。

「ぺらり」だと、そのスピードが全体的に遅く、静かな動作になる。
この変化形は、「ぱら」も「ぺら」も同じである。

では、本を置いたままの状態で、複数のページを送るのが「ぺらぺら」なのか…
というと、これはちょっと違う。

「ぺらぺら」は、私の本をめくる表現には、あまり出てこない。
あえて使うなら、人が手に持って、めくって見せてくれたとき、ぐらいだろうか。

ほとんどの場合は、本ではない紙を手に持ち、指で送る複数形であったり、紙単体の薄さを表す言葉になったりする。

ちなみに、本ではない書類の束を机に置いて、指で送るときは「ぱらぱら」である。

本とは逆の表現になるのは、その文字が書かれた紙媒体に対する、私の心の距離感が関係しているように思う。

「ぺら」は遠く、「ぱら」は近い。

のめり込んで読みたい対象である本は、置いたままのときは「ぺら」。
手に持つと「ぱら」。

特段読みたいわけではない書類は、基本が「ぺら」。
しっかり読まねば、書かねば…となってきて、ようやく「ぱら」になる。

つまり、いま私が書きたかった動作は、
本のページを「ぱらり」とめくる。で合っている、うん。
自分の脳内で答え合わせがすんだので、納得してまた書き始める。

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