詩人・谷川俊太郎さんの、エッセイと詩から集められた、
言葉の小箱のような本。

「自分」「生きる」「愛」「子ども」など、
10個のテーマに分かれて、谷川俊太郎さんの言葉が散りばめられています。
私がいちばん何度も読んだのは、「詩と言葉」の項でした。
言葉に対する、谷川俊太郎さんの価値観や視点が、すごくおもしろくて好き。
名言はたくさんあるのだけれど、たとえば…
”自分にふさわしい生き方をつくらずに、
文章のリズムをつくることはできない。”
これ。
本当に、そう! って思った一節。
こんな感じで、一ページにひとつ、エッセイからの抜粋があって。
あいまに「二十億光年の孤独」など、よく知られた詩の一節が挟まれているんです。
この考え方、この価値観から、谷川俊太郎の詩が生まれたのか、と。
感性の川の流れに手をひたすような、言葉の旅を体験できます。
詩って、泉みたいだと思うんです。
言葉が少ないぶん、泉を構成するすべてが語られることはない。
水面の静けさ、美しさに息をのみ、
そっとのぞき込んで、見えない深淵を思い描くのが、詩。
エッセイは言葉が多いから、その深淵が、いくばくか形になって見える気がする。
谷川俊太郎の詩の奥にある、谷川俊太郎というひとの生命の形が、エッセイにはあるような気がしています。
続けて読みふけり、谷川俊太郎の世界に溺れるもよし。
ふと開いたページから、今の自分に必要な言葉を受けとるもよし。
詩と同じで、自由に読める。
読者が触れたい「谷川俊太郎」が詰まった一冊です。