びくともしない

うちのむすこ。中学三年生。
もう、わたしより背が高くて、力がつよい。

むきあって立ち、手のひらを合わせる。
ふんっ、と力をこめて、むすこを押す。
むすこのからだは、ちっとも動かない。

手のひらを握りこんで、体重をかけ、さらに力をこめてみる。
むすこは、ぐっと踏みとどまっている。
うーん。動かない。

彼がまだ、わたしよりちいさかったころ、
ごろんと転がして勝てるところを、「うわあ、やられたー!」
と倒れてみせると、からからと得意げに笑ってたっけ。

本気でかかっているのに、いまはもう、びくともしない。
そればかりか、するりと上手に圧を逃す。
なんと大きくなったこと。

必死の形相のわたしを見て、家族がけらけらと笑う。
むすこの成長を、すごいなあと言いながら。

そんなむすこが、旦那さまを相手にしたら、
こんどは旦那さまが、びくともしない。
むすこが渾身の力で、押しているのに。

ためしに、わたしも押してみた。
手だけじゃなくて、頭もつかって、
ごりごりと、全身で旦那さまを押してみた。

ほんとうに、ちっとも動かない。
余裕しゃくしゃくで、笑っているし。
なんだ、この岩みたいに重たいひとは。

最後に、ぽいっと転がされた。
見ていたむすこが、わははと笑った。

物理的に、力のつよいひとたちが、
わたしをたすけてくれる家族であること。
安心するし、ありがたいなあと思うのである。

「お母さんのつよさは、精神だからね」
はじめからおわりまで観戦していたむすめに、
アンパンマンのような感想をもらった。

まあ。顔がぬれたら力が出なくなるぐらいには、体力値はよわい。
が、あたらしい顔をもらったら、あっさりと復活するぐらいには、
たぶんおそらく、まっすぐに元気なわたしだ。

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