今まで、いろんな暮らしの本を読みました。
そのようなイメージで開いたら、見事に予想を裏切られます。
まるで、物語を読んでいるかのような筆致。
著者の色合いが濃厚に感じられて、おもしろかったです。
みずみずしくて、あたたかい
読んでいると、そんなイメージが駆け抜けていきました。
といっても、湧き水の透明感や、ぬるま湯の心地よさなんかとは、ちょっと違う。
開け放たれた窓から優しく吹き抜ける、四季折々の空気を含んだ風のような、みずみずしさとあたたかさです。
「風の通り路」の中には、こう書かれていました。
どこからでも風を呼びこむことができ、それが家のなかをすううっとめぐるような暮らし方がしたい。
家のなかだけではなく、こころのなかにも、ひととひとのあいだにも、風を通したい。
モノが多すぎたのでは風が通る路をふさぐし、物欲にからめとられれば、こころもごたつく。
ごたついたこころでは、ひとを想えないということだ。
きっと、1冊を通して「風の通り路をつくるこころ」で、日々が描かれているから、そんなふうに感じるのでしょう。
ひとを想っているから、「荷をふやせない」状態で出かける夫を見て、胸につかえるものを感じたり。
「ジャスト ショウ アップ」を、悪くないと思えるようになったり。
避難袋をそなえながら、向こう側にある「自分たちさえ助かればいいという思い」に気づいて、
「いっしょに困る相手と出会ったそのときにさし出し、いっしょに困りながら使う道具、お腹におさめられる食べものをそなえたい」に、行き着くことができたりするんですね。
モノも大事だけれど、いっしょに困りましょうというこころはもっと大事
とても素敵な言葉だな、と思いました。