いつまでも見つめていたいな、と思う瞬間があります。
たとえば、思いがけず子どもが見せてくれた、弾けるような喜びの表情。
綺麗なグラデーションで移り変わる、夕暮れの空の色。
小さくなった祖母の、しわしわの笑顔と、手のひらのぬくもり。
同じようでいて違う形に、寄せては返す波のうねり。
お気に入りの絵や本を眺めていたいのとは、ちょっと違う。
私がいつまでも見ていたいと思うものは、移りゆくもの。
記憶にしか留めることができなくて、写真や文字のようには、いつでも見返せないもの。
そして、自分ひとりでは作り出せないもの。
自然の移ろいも、人の盛衰も、自分の力では再現することができない。
だからこそ、いつまでも見ていたい。
いつまでも見つめてはいられない、今この瞬間、そんなふうに思うのです。