歌集を読みたくなる夜がある。
うつくしい言葉にたゆたいながら、眠りたい夜。
小さな明かりを、ひとつだけ。
さらりと読み眺めるでもなく、無我夢中で没頭するでもなく。
星空のような、歌集を読む。
無数の想いが、この世には溢れているのだけれど。
歌に記されるのは、ほんのわずかの、磨かれた言葉だけだ。
余白の多い、歌集の一頁をめくる。
選ばれなかった言葉と、詠まれなかった想いに、心を馳せる。
肉眼では見えないだけで、空には数え切れないほどの星が瞬いているのだと、たぶんきっと、知っている。
星の数ほどある、他愛ない私の一瞬を、ふと詠んでみたくなる。
彼らほどに、強い光を放つことはできないけれど。
歌集の向こうの詠み人は、同じ宇宙に生きている人間なのだ。
同じ想いを抱いているのに、その言葉のうつくしさに、息をのむ。
永遠に追いつけないうつくしさを、たゆたいながら眠りに落ちる。