朝起きて、窓を開けるとき、勇気がいる。
私は、田舎住まいでありながら、極度の虫嫌いのため、
できる限り、彼らとは顔を合わせたくないのである。
カーテンを開けて、窓の外に、その姿が「こんにちは」と現れると、再びカーテンを閉めたくなる。
窓ガラスに張りついて、腹部を見せつけられた日には、
そのまま回れ右で、なかったことにしたい。
今の季節、網戸の内側にまで入り込んでくる種族にいたっては、もはや憎悪の念すら湧いてくる。
それでも、空気清浄機も自動換気機能もないわが家で、
家族の健康を考えると、ずっと閉め切ったままにはできない。
毎朝、勇気を出して、窓を開ける。
怖いものには、出会いたくないのだ。
外の世界が怖いと思うと、身も心も、閉じてしまいたくなる。
けれど、閉じたとしても、完璧な安心安全などありえないので、
「まだすぐそばに、怖いものがいるのではないか」
「怖いものが、隙間から近づいてきているのではないか」
そんな恐れと、結局戦い続けることになる。
どちらにせよ、相対しなければならないものなら、背を向けるより、顔を向けたい。
人生に対しては、そう思って生きている。
虫に対しては…、まだまだ修行中である。