“愛し合うとは、二人がそれぞれ相手を見つめ合うのではなく、
二人がともに同じ星を見つめることだ。”
サン・テグジュペリの『星の王子様』の一節。
訳によって、日本語表記の詳細は違うけれど、有名な言葉ですね。
私がこの文章に出会ったのは、高校生のときでした。
恋する相手しか見えていないお年頃に、
「お互いに相手を見るのではなく、同じ方を向いて歩むのが、愛なんだよ」
って言われたときの、衝撃といったら!
一言一句違わず、ノートに書きとめました。
以来、好きな言葉をまとめたノートは、何度か代替わりしていますが、
最初からずっと変わらずに、書かれ続けている一節です。
実はこれ、ワークショップを受けていて、
「好きな言葉は何ですか?」
と聞かれて、頭に浮かんだもの。
確かに名言ではあるし、言葉ではあるけれど、単語ではないんです。
この一節に惹かれた、軸となる部分を伝えたいなら、
好きな言葉は“愛”という単語でもよいはず。
にもかかわらず、好きな言葉が“文章”として出てくる。
私が好きだと感じるのは、単語そのものの意ではなく、
言葉を発する人がのせた意味や気持ち、言葉を受けとる人がのせる意味や気持ち、
双方の文脈をひっくるめての「好きな言葉」なのだな、と思いました。
言葉は、文章は、それ単体では存在しない。
発する側と受けとる側がいて、初めて成立するもの。
好きな言葉ひとつ選ぶときでさえ、こんな個性が出るなんて。
これだから、文章はおもしろいのです!
