心屋仁之助さん 改め、Jin佐伯仁志さんの本を読んだら、
こんな「神社ミッション」がありました。
“参拝者がほとんどいないような寂れた神社へ行き、
願いごともせずに、ただ賽銭箱に1万円札を放り込む”。
…やったこと、ありますか?
私はないです。
だから、何それおもしろいな! って思ったんです。
Jinさんいわく「いわば究極の無駄遣い」。
お金への思いや「感」が変わる、おもしろい体験になるらしいです。
詳しくは、ぜひこちらの215ページを読んでください。
では、さっそくやっていきましょう!
神社に行って、入れてくるだけですものね。
いや…待って。
寂れた神社って、どこにあるの…?
そもそも、パッと思い浮かばないから、寂れた神社なわけですよね。
よし、ネットで近隣の神社を検索してみよう。
ふむふむ、見覚えのない名前が出てきました。
徒歩圏内に、寂れた神社は見当たらないなあ。
少し離れた地区には、いくつかありそう。
ただ、細かい場所が、地図を見てもよくわかりません。
Googleマップを拡大しても、写真を見ても、
「はて? こんな道あったかしら?」と、謎が深まるばかりです。
私はミステリーツアーをしたいんじゃないんだ、寂れた神社に行きたいんだ…!
休日に、1万円札を入れに行くためだけに、
寂れた神社を調べる私。
冷静に考えて、ちょっとおもしろい。
うん、そして、地図がわからない。
百聞は一見にしかず、です。
なんとなくこのへんかな…というところまで、行ってみよう!
車のキーと、免許証と、1万円札だけを手に持って、ふらりと家を出る私。
ちょっとそこまで行くサザエさんだって、もう少し手荷物があるでしょうよ。
自分でツッコミたくなるほどの軽装で、いざ出発!
なにせ、公共交通機関の不便な田舎です。
わざわざ、寂れた神社に1万円札を入れるためだけに車を出して、
しかも迷いながら、行ったり来たり。
このあたりで、いよいよ私は何をやってるんだろうと、楽しくなってきました。
無意味の極み。
車を走らせながら、ちらりと、
「1万円あったら、子どもたちにおいしいお肉、食べさせてあげられるなー。
買い物もできるよなー」
という思考が頭をよぎったのですが、そんな邪念は、神社ミッションには不要です。
この1万円札は、寂れた神社に入れられるためだけに、存在しているのです!
なんか心が燃えてきた。
ちなみに、田舎あるあるかもしれないのですが、
見知らぬ人が集落の中をウロウロしていると、ちょっとした不審者になりかねない。
となると、完全に人通りのないところの、寂れた神社を探すか。
自然に車を停められそうな場所で、ほどよい寂れ具合を探すか。
Googleマップには存在するのに、カーナビには出ない神社たち。
運転しながら、きょろきょろと見回すのは、危険が過ぎる。
誰かに道を尋ねるにしたって、
「このへんに、寂れた神社ありますか?」は、不審者がすぎる…。
となれば、自力でさまよった結果として、寂れた神社を見つけるしかないのです!
そうして、ようやくたどり着きました。
すでにやり遂げた感満載になりかけましたが、落ち着け私。
まだなにもしていないぞ。
神社の周囲を見渡します。
少なくとも参拝者はいないし、宮司さんも常駐していない。
朽ちてはいないけれど、手入れが行き届いているとまでは言い難く。
寂れている部類に入れても、差し支えないでしょう。
調べてさまよって、ここまでの所要時間は、1時間弱。
私の体は、ミッションへの情熱よりも、若干の疲れが上回り始めています。
いや、これこそが究極の無駄遣いへの道のりなんだ…っ!
少し離れたスペースに、車を停めて。
クモの巣のかかった鳥居をくぐり。
飛んでくる虫を、バタバタと振り払いながら、石段を上ります。
私、めちゃくちゃ虫が苦手なんですよ。
人っ子ひとりいない、秋の山あいの神社なんて、できれば立ち入りたくない!
それをわざわざ苦行に飛び込んで、1万円札を入れてくる…。
もはや意味がわからなさすぎる。
私は今、新しい世界の扉を開こうとしているに違いない。
参拝のお作法に則り、しかし願いはいっさい抱かずに、
お賽銭箱に1万円札を入れます。
ひらり、と吸い込まれていきました。
軽っ。
ともあれ、ミッション完了。
「ありがとうございましたっ」と心の中で呟いて、足早にその場を立ち去ります。
早く虫のいないところへ帰りたい一心で、1万円札に思いを馳せるゆとりもなく。
こうして、私の神社ミッションは、終わりを告げたのでした。
本に書かれていたような、手放す怖さや、変な汗は出てこなかったな。
でも確かに、さわやかな気持ちにはなりました。
誰もいない境内で、金具の錆びついたお賽銭箱に、
1万円札を入れたときの、手を離した瞬間の、
軽っ。
というのが、きっと私の体験した、お金の「感」なのでしょう。
Jinさんに倣って締めくくるなら、(たぶんね)。(しらんけど)。
その後どうなったかと言いますと、びっくりするほど、なんにも起きていません。
それでいいんです。
初めての神社ミッションは、おもしろかったから。
究極の無駄遣いは、
「あーよかった、楽しかった」
な体験でした。
