「手折る」って、美しいことばだと感じるのです。
辞書で意味を調べると、
手で折る。
新明解国語辞典
と書かれています。
ほかにも調べてみると、
女性をわがものにする。
などとあって、ことばの意味としては、特に美しいわけではない。
わたしが美しいと思うのは、ことばの響きのほうなのです。
棒状のものを、ただ「折る」または「手で折る」というとき、
わたしの頭の中に流れる音は、ぽきっ、とか、ぼきっ、とか。
勢いよく弾むのだけど、折れた断面には雑味が漂う。
わたしの視点は、折る側にいることが多いです。
いっぽうで「手折る」というと、
そっと手を添えて、静かに折り取る姿が先に浮かびます。
音はかすかに聞こえるかどうか、ぐらいの。
あえてオノマトペにするなら、ぽきり、かなあ。
しぐさも、折られた断面も、繊細な印象です。
わたしの視点は、たいてい折られた側にいて、
痛みを感じないまま、折るひとの手のひらにすっと落ちるように、
気がついたらそこにいたような、一種の心地よさすらあるような。
折るという能動的な動作を指しながら、折られるという受け手側の感覚を想像させる。
ことばから広がる音と気配に、深みがあるのが、たぶん美しく見えている。
わたしが美しいと感じるものは、立体的であることが多いのですよね。
