朝、窓から虹が見えました。
いつもの雨上がりの雲間にかかる虹ではなく、青空の中、白い雲と雲に橋を架ける七色の扇形。
挿絵のような光景に、思わず口元が緩みます。
昔読んだ、おとぎ話みたい。
昼、曇り空の下で車を走らせていたら、ぽっかりと穴の開いた雲を見つけました。
うまく撮れませんでしたが、ドーナツの穴のように真ん丸で。
違う世界への入り口を思わせるほど、くっきりとした空間でした。
こんな風景を見ながら、10代20代の頃に聴いていた歌を口ずさみながら。
運転していたら、懐かしい感覚に襲われました。
「どこまでも、行きたい」「どこまでも、行けそうな気がする」
それは昔、私がまだ結婚も就職もしていない、17歳~19歳頃に感じていたもので。
限りない未来への可能性と、根拠のない自分への自信から成る、胸が震えるような、涙が溢れるような感覚です。
当時の私の「感性」と言ってもいいかもしれません。
日々を見て、日々を聴いていただけで、無限に広がる世界が、私の前には確かにあった。
――大人になって、人並みに、いろいろあったとは思います。
その辛く苦しい時期を乗り切るために、私は自ら、心の感度を下げて生きていたのです。
自身の中で、いちばん輝いていた時期を問われると、必ず浮かぶのは、先の3年間でした。
自分の好きなこと、したいことがわからず、自信も持てなかった大人の私にとって、あの頃の自分はもう、取り戻せない幻のように思っていたけれど。
ただ、私が、心のスイッチを消していただけだったんだ。
唐突に、そう理解しました。
長く使っていなかった分、再起動には、少しだけ時間がかかるかもしれませんが。
もう一度、スイッチを入れて、生きようと思います。