【noteエッセイ】「ついで」の贅沢

ネットで、本を注文したときのこと。

一冊だけ頼むのも何だかなあと、

「こちらもおすすめです」と書かれた中から、ついでに数冊を購入した。

ごく自然に、さも当然に、「ついでに」買ったわけだけれど。

これは、幸せな贅沢の極みだ、と思うのだ。

本屋さんで買うときも、然り。

目的の一冊を手に取ったあと、気の向くままに店内を徘徊し、

おもしろそうだというだけで、目的以外の本も買う。

なんなら、目的がなくても本屋さんに行き、行ったついでに何冊か買う。

コーヒーついでに、レジ前の駄菓子をひとつ足すぐらいの感覚で、ついでに本を買う。

スーパーに行ったついでに、隣のATMに寄るぐらいの感覚で、小説のついでに漫画を買う。

自分のために「ついでに本を買う」ことができるのは、なんて贅沢なことなのだろう。

読みたくてたまらなくて、あるいはとことん吟味して、選ぶ一冊も幸せなら、

ひょいとついでに選ぶ一冊も、また幸せ。

精鋭だけが並ぶ本棚も幸せなら、自分の好みがみちっと積み上がる本棚も、また幸せ。

メインディッシュのお肉のついでに、お魚も食べるかのような、

ケーキのついでに、ドーナツもつまむかのような、

物量と質量にあふれた贅沢が、本にはある。

おまけに、読みすぎても太らないし、胃もたれもしない。

「ついで」の本は、私の完璧な贅沢だ。

(note創作大賞2024・エッセイ部門)

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