【noteエッセイ】世界平和の距離感

私は虫が苦手である。

ちょっとした恐怖症レベルの虫嫌いであるのだが、何の因果か、田舎の古い家に住んでいる。

そのため、虫との遭遇率が恐ろしく高い。

屋外で昆虫に出会うといったような、生易しいときめきではない。

室内で害虫に巡り合ってしまう恐怖を抱えて、日々暮らしている。

防虫対策にも掃除にも余念がないが、田舎の虫はアクティブが過ぎるために、なかなか功を奏さない。

この季節には、名前も書きたくないほど嫌いな虫が盛りだくさんで、軽い絶望の淵にいる。

その中でも、まだ何とか名を記せる、ダンゴムシについて話そう。

朝起きると、踏んでくださいと言わんばかりに、廊下の真ん中に丸まっている。

ふと視線を上げれば、元気に天井を散歩している。

玄関周りを掃くと、風で飛ばされた砂利のように、何十匹と転がってゆく。

ダンゴムシというのは、外で石をどけたら、数匹が地面をもこもこ歩いているような、平和的な存在ではなかっただろうか。

今のわが家の現実は、正直、愛をもって受け入れることができない。

物事には、各々にとっての適切な位置と量がある。

円滑な関係を築くためには、相手にとって心地よい距離感というものを、一度考えてみるべきだろう。

相手の領域を侵してはならないと思うのだ。

同じ地球に暮らす生命体として、憎しみが勝って種の滅びを祈りたくなる前に、どうか平和的共存の道を探っていただきたい。

――せめて、家の外にいてください。

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