【noteエッセイ】おばあちゃんの手

手のしわしわが、増えたなあと思う。

大人になり、妻となり、母となり。

特別なケアもしないままに迎えた40代であるし、順当な手である。

水仕事による肌荒れもあるので、綺麗ではない。

爪も、おしゃれなネイルなどは施していない。

ピアノを習っていた子ども時代の、爪が長いと叱られる意識がいまだに抜け切らず、短く切り揃えてある。

指もやや変形し、皮が固くなっている。

まだパソコンが一般的でなかった十代の頃に、原稿用紙数百枚にガリガリと向かい合った名残である。

私の人生が刻まれた手は、大好きだったおばあちゃんの手には、まだ遠い。

おばあちゃんの手は、固い皮膚を優しく覆うような、しわしわだった。

たくさんの苦しいこと、悲しいことを、すべて内側に包み込んで微笑んでいるような手だった。

小さくて、柔らかくて、芯のある触り心地がした。

私もずいぶん、しわしわは増えたけれども、あんな優しさは宿っていない。

これからの人生で、おばあちゃんの手に追いつくことはできるだろうか。

ばあちゃんが私にくれたように、大切な誰かに、ぬくもりを贈ることができるだろうか。

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