スマホをぱたりと置いたら、インカメラになっていた。
液晶いっぱいに天井が映っている。
見慣れているはずの家なのに、初めて来た場所に見えた。
まるで、不思議の国に迷い込んだかのよう。
思わず画面をのぞいたら、私の顔が逆さまに映った。
これまた、毎朝鏡で見る自分の顔とは、なんだか違う人に思える。
視点が違うだけで、世界はがらりと変わってしまう。
子どもの頃は、庭木や雑草を眺めながら、想像の中で小人になって冒険していた。
ジャングルジムのてっぺんに座って、鳥の気持ちになっていた。
自由に視点を切り替えて遊んでいたことを、すっかり忘れてしまっていた。
床にぺたりと頬をつける。
息子たちが並べた、恐竜のフィギュアを見上げてみる。
鋭い牙が迫る。迫力満点だ。
ぬいぐるみを置いて、至近距離で見つめあってみる。
いつもは私が可愛がる役目なのに、今日は頭を優しくなでられている気分がする。
ごろりと仰向けになり、天井の木目の海を漂う。
私の知っている世界の中にある、私が知らなかった世界で、のんびりと遊ぶ。
いつでも、誰でも、不思議の国のアリスになれる世界に、私たちは生きている。