早朝から、蝉が声を張り上げている。
庭のどこかで、猫がふぎゃふぎゃと揉めている。
名前のわからない鳥がかん高く鳴き、農作業の機械音がブンブン響く。
田舎の夏の朝は、にぎやかだ。
これを「今日も元気だな」と思うか。
「朝からうるさいなあ…」と思うか。
いちばん最初に浮かぶ思いで、今日の精神状態がわかる。
鷹揚に聴いていられるときは、心に余裕があって、優しい気持ち。
苛立ちを感じるときは、余裕がなくて、刺々しい気持ち。
前者と後者とでは、私を取り巻く世界が、まったく違う。
優しさには優しさが返ってきて、今日はなんだかいい一日だったな、と思えるし、
棘には棘が返ってきて、今日は疲れる一日だったな、と思う。
世界は、見る人の捉え方で、ずいぶん変わる。
無理やりポジティブに眺める必要はない。
ただ、“世界”という鏡を通して、自分のことが少しだけわかる。
ということがわかると、観察するのが、少しだけ楽しくなる。