「師の跡を求めず、師の求めたるところを求めよ」
という一説を見かけた。
調べてみたら、孔子の言葉とされているが、原典は松尾芭蕉の、
「古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ」
とも言われており、
「昔の偉人が、何をしたかという結果を真似るのではなく、何を成そうとしたかという志を見極めて行動しなさい」
の意だそうだ。
刀を喉元に向けられたように、私の弱点を的確に突く言葉だった。
私は、人の深層心理や言動の裏側、その背景にまで思いを馳せるのが、下手くそである。
想像力がまったくないとは思わないけれども、多角的な視点を持つための知識と経験が、圧倒的に足りていないのだ。
中学生の頃に、パーソナルスペースの広がりについての小論文で、
「電車やバスで、誰もが間隔を空けて座るようになった」と書き、
「通勤ラッシュの満員電車の場合はどうなるのか」と赤で添削をもらった記憶がある。
自分が育った田舎町の、過疎化した公共交通機関が、当時の思考世界のすべてだった、ということだ。
ちょっと考えれば、都会の電車事情ぐらい、想像できそうなもの。
誰かの成功パターンを踏襲してみるときも、同じである。
ひとまず行動を真似てみることは、考えて動けなくなるよりは有効ではあろう。
が、ただ真似を続けても、私は私であって、偉人や先達ではないので、
手法ではなく考え方を取り入れなければ、いつまでたっても次に進めない。
こちらも、自分を省みて、ちょっと考えれば、わかりそうなものである。
その「ちょっと考える」ことが、とても大事なのに、表面のわかりやすいところだけを拾い上げ、独りよがりになりやすい。
視野を広げること、視点を上げることを忘れないように。
そうできる自分であるために、知識と経験を積み上げることを、惜しまないように。
思いがけず名言に触れると、人生に気合いが入って、いいものだ。