今回の読書スポンサー様は、
アクセサリーや言葉を通じて、世界を豊かに耕し、
心に種を蒔いてくれる、 佐野敦子 つるちゃん です。
【日本のヤバい女の子(はらだ有彩)】
昔話って「そういうもの」だと思って、読んでいたけれど。
そこに描かれた世界全体を、ひとつのものとして見るのではなくて。
まとわりつく時代背景や、固定観念を引っ剥がして、
登場人物ひとりひとりの顔を、覗き込んでみれば、確かに。
「昔々、マジで信じられないことがあったんだけど聞いてくれる?」
ですね…!
なぜ、彼女たちは、そのように振る舞い、結末を迎えたのか。
現代であれば、この展開には至らなかっただろうな。とか。
逆に、今でも同じことは起こり得るな。とか。
物語の結末の先に、違う未来があったんじゃないかな。とか。
著者のはらださんが、どこまでも同じ“女の子”の目線で、
昔話の彼女たちに、思いを馳せてくれるから、
古典が一気に身近になる、おもしろい本でした。
はらださんは、女の子を取り巻く一々に、
「まったくそうだよ!」と共感し、「なんでよ!?」と憤ります。
でも、それだけにとどまらない。
物言わぬ昔話の行間から、たくさんの感情を拾い上げて、彼女たちの素顔を描き、
その心の内や、現代にも通ずる価値観を、さまざまな角度から考察しています。
昔話だから「そういうもの」だったわけではなくて、
読んでいる私の、意識の隙間に今もある「そういうもの」に、はたと気づかされるエッセイです。
挿絵もすごく良くて、むしろ「現代に生きていたら、きっとこうだよね!」という、
いきいきとした女の子たちの表情が描かれていて、好きです。
最後のページの、思い思いに過ごしている女子会のイラストが、
愛おしくて、尊くて、じんわりと泣けました。
冒頭に、こんな一節があるんです。
“時に勇気づけられ、時に憎んできた物語の行間から、必要なものだけを掬いあげ、
明日も、明後日も生き続けていく糧にする。
現代をたくましく乗り越えて、今度は私たちが幸福な昔話になる日を夢見て。”
そう、私たちもいつか、彼女たちと同じ、昔話の一員になる日が来る。
昭和・平成・令和と生きる私は、いったいどんなふうに語られるのか。
おもしろい。存分に、人生を謳歌してやろうじゃないか。
明日への意気込みを、ひっそりと笑みにのせて、本を閉じたのでした。