ある夜のこと。
「ペパーミントティーを飲みながら、手帳を書きたい」
と思って、お茶を淹れた。
清らかな香りが、スッとからだを抜けていく。
秋ごろから書き始めた手帳には、今日の楽しかったことや、幸せだったことを綴っている。
さて。今日は、どんなことがあったかな。
朝からの逐一を思い出し、考えていて、ふと気がついた。
今、まさにそうじゃないか! と。
飲みたいお茶を飲みながら、書きたい手帳を書いているのは、
今日の楽しくて幸せな出来事、できたてほやほやに違いないのに。
いま目の前にあるものを見ずに、別の何かを探している。
滑稽な、喜劇みたいだ。
おかしくなって、ひとりで笑ってしまった。
「“今ここ”にある幸せや、豊かさを感じる」ために、手帳を使い始めたというのに、
私の意識は、今じゃない時間に、飛び去っていた。
一日をふり返るときは、順序立てて思い出すものである。
そう思い込んでいたことにも、気づかされる。
「ペパーミントティーを飲みながら、手帳を書いている」
と、手帳に書いた。
幸せな夜が、更けてゆく。