路地裏の答えあわせ

走るたび、違うものが見えるんです。

こんな壁の家、あったかな。
ここの集落、奥におおきい家だらけだな。
窓のかたちが、おもしろい。

ジョギングを朝の時間帯に変えてから、よりいろんなものが見えます。
記憶と違うもの。記憶にないもの。

地元でないとはいえ、曲がりなりにも15年ほど住んでいるわけで。
それでも、まだまだ知らないと感じる風景が、たくさんある。

思いのほか、路地が多いことに気がつきます。
路地裏と呼ぶのもはばかられるぐらいの、家と家とのすきま。

この先には、何があるんだろう。
行き止まりかな。まったく別の場所に出るのかな。

きっと、ここで幼少期を過ごしていれば、めずらしくはない景色だったんじゃないかなあと思います。
じっさい実家のまわりの路地は、なつかしいという気持ちこそすれ、未知の感覚はない。
子どものころに、たくさん歩いて遊んだからね。

大人になってからは、ふつうの路地裏は散歩できるけれども、
家と家とのすきまをすり抜ける勇気は、わたしにはなかったのです。

鳥のように見下ろせたなら、路地裏の答えは簡単にわかる。
だけどわたしは、迷路をクリアしたいのじゃなくて、
目のまえに、ぱっと景色が開ける瞬間が、すごくわくわくして好きなんです。

路地裏の答えあわせは、正確に正解じゃなくてもいいな。
迷いこむ時間も、まるっと楽しいもんね。

実のところ、ほんとうは、いまでも。
ここじゃないどこかにつながる路地裏が、どこかにあるって信じている。

しなやかに体を滑りこませる猫がいて、頼まれもしないのに、
心のなかで「いってらっしゃい」ってつぶやいてみる。

猫にとっては、おそらく日常に。
わたしにとっては、冒険の世界に。

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