いつだったか、読書感想文の宿題が出される時期に、書店の高校生向けコーナーに置かれていました。
この危うい感じ、知っています。
大人から見れば「危うさ」なのだけれど、当人たちにとっては、そうではなく。
あたしも綾菜も勉強は嫌い、苦手なことを克服する努力も苦手、真摯に懸命に何か一つに打ちこむこともできない。
いいかげんで、怠け者で、中途半端だ。
でも、自信はあった。あたしたちは、何とかやっていけるという自信だ。
何の根拠もないけれど、潰れてしまわないという自信だ。
この感覚です。
けれど、根拠がないゆえに、大人の目には、危うさとして映るのかもしれません。
理穂が、睦月と決定的な遠さを感じたような思いも、抱いたことがあります。
「この感じ、知ってる。」と思う物語は、いくつかありましたが、直接的にガーンと響くタイプではなく、じわじわと胸に広がってくる系統でした。
今まで読んできた青春小説のように、人生を変える大事件が起こったり、涙を流して感動する展開が待ち受けていたりは、しません。
理穂と、美咲と、如月の日常が流れていきます。
その中に、かすかな喪失感。
いつかの私にもあったはずの、リアルな時間と感情が、今はもう失われていることを感じさせられてしまう。
大人になって読んだから、そんなふうに思うのでしょう。
高校生ぐらいの子が読んだら、どんな感想が出てくるのか、訊ねてみたくなりました。