もし子どもに聞かれたら、即答できないな…と、読んでみることにしました。
本文にはふりがなもついていて、子どもたちに届けたい思いが伝わる1冊です。
「頭のよさ」って、感覚的には何となくわかる気がする。
だけど、きちんと言葉にするのも、普遍的な答えを見つけるのも、難しい問いです。
学歴や点数重視で育った世代ですが、時代とともに価値観が移り変わるのを見てきたので、絶対に変わらない「頭のよさ」って、逆に何なのだろう? と。
著者はこう語ります。
ぼくは、「頭がいい」というのは脳の「状態」だ、と考えています。
頭のいい人、よくない人というように、分けられているわけじゃない。みんな、頭のはたらきのいい状態と、そうでない状態がある。
その「はたらきのいい状態」を増やしていけば、だれもがどんどん頭がよくなる、という考え方です。
(中略)
頭のいい状態を増やせると、すっきりと気分がいい状態も増えるのです。
読んでいくと、しなやかな強さや柔軟性を感じます。
学校生活や受験勉強、読書を通して、「学び」そのものに対する姿勢や方法を知ったり、社会で生きやすくなったりする、有効な向き合い方。
好きなことに没頭して見えてくる豊かさ、不機嫌をまき散らさない大切さ、生きるための切り替え力。
「幸せになるために必要な力」とも言えますね。
――最初に「即答できない」と言いましたが、私が10代で、大人からすぐに答えを返されたら、むしろ疑うかもしれません。
「結局、学校の勉強しろってことでしょ」
長女なら、そんな反応しそう(笑)。
尊敬している、信頼できる相手の言葉なら、すとんと素直に入るけれど。
大人が万能ではないと知った子どもには、「大人にとって都合のいい答え」に聞こえる可能性もあるな、と。
私は特に白黒思考で、自分の気持ちが受け入れられていないと感じた瞬間に、相手をシャットアウトしがちだったし。
自分に都合のいい意見にしか興味のない、ふり返れば成長の幅がとても狭い思春期でした。
そう考えると、子どもたちにちゃんと思いを伝えるには、本当に信頼されることも欠かせないですね。
「頭のよさ」ってなんだろう
時代も、人も、自分自身も変わるもの。
40年生きてみて実感した「頭のよさ」とは、やっぱり「生き抜く力」だと思います。
生きる基本の生命力と、変化についていける適応力や判断力。
社会に受け入れられるための、想像力や行動力。
それを身につけるために、どれだけの知識と知恵を学び、どれだけ動くことができるか。
ひっくるめて、「自分が生まれた世界を生き抜く力」が、今の私にとっての「頭のよさ」です。
齊藤さんと、奇しくも同じ結論でした。
頭のよさは、人間に幸せをもたらしてくれるものです。
(中略)
人間が、強く生き抜いていくために獲得した能力、それが頭のよさ。
頭をよくすることは、生きていくための幸せに強く結びついているのです。
さらに言うなら、
グレーゾーンの中で道を見つける。
頭をよくしていくというのは、そういうことを考えつづけることだと思います。
本当の意味での頭のよさとは何か。
現実の社会を生きていくうえで、さまざまな局面において、どうすることが自分たちの幸せにつながるのかということを考えぬくこと。
よりよく生きるために、人は頭をよくしていく。
「頭のよさ」とは、人間を幸せにするために活かされるべきものだとぼくは思います。
「生き抜く力」とは、常に現在進行形のもの。
そのはたらきを止めないようにすることが、「頭をよくする」ということなんですね。
じっくりと考えを深められる、いい読書でした。