人の感情がそれぞれ見えている、5人の高校生。
符号や矢印や数字、マークやバーなど、形はさまざまだし、お互いに見えていることは知りません。
見えていても、だから何か特別なことができるわけではなくて。
見えるがゆえに、勘違いですれ違ったり、悩んだりしてしまう。
自分や相手に向き合いながら、ひとつずつ葛藤を越えてゆく姿は、ごく普通の10代そのものです。
でも、この主人公たちのように形としては見えなくても、自分だけが感じ取れる場の雰囲気や心の動きって、ありますよね。
「考えすぎ」「気にしすぎ」と言われることがほとんどの小さな揺らぎなのだけれど、確かに空気が変わった、と感じる瞬間。
そんな繊細な感覚を、「見える能力」によって、すごく伝わりやすく表現しているなあ、と思います。
みずみずしくて、愛らしい物語でした。