久しぶりに、エンヤの「Wild Child」を聴きました。
「冷静と情熱のあいだ」、当時ハードカバーで買って読んで、映画も観に行って。
それがきっかけで、この曲を好きになったのでした。懐かしいなあ。
――あの頃、私にはこれから先、たくさんの情熱だけが訪れると。
なんの根拠もないけれど、そう信じていました。
けれど、今あるのは穏やかな冷静と、あの頃思い描いていたのとは違う、健全な情熱。
ともすれば身を滅ぼすかもしれなかったり、狂おしいほどに心を焦がしたり。
たとえ誰かを傷つけてしまっても進んでいく、そんな危うさや揺らぎを含んで燃える炎ではなく。
今あるもの、今ある暮らしの、安全安心の中で物事に向き合う、灯りのような情熱です。
だから今の自分が不幸だというわけではなく、どちらがいい悪いでもありません。
ただ、昔は想像だにしなかった穏やかさに身を置いてみて、一抹の寂しさがよぎりました。
確かに私を形作るのに大切だった「あの頃」は、もう戻らない時間なんだな…と。
昔はよかった、とも違う。
ただ過ぎ去ったものを、改めて見つめてみたら、意外に素晴らしかったのではないか。
もっとちゃんと、見て聴いて、覚えておけばよかったな。
そんな回顧の気持ちに浸りながら、エンヤの歌声に耳をすませました。