裏表紙に、青春恋愛SF小説、と書かれていました。
「超巨大なコンピュータ『無限記録装置アルタラ』の、記録世界の住人」の物語です。
どこまでが、現実か。どこまでが、記録世界か。
開けても開けても無数に重なっている箱みたいに、世界が転回していきます。
その原理は何となくしか理解できないのだけれど、こういうの、好きです。
どれが現実なのか、わからない。今ここにいる自分は、果たしてどうなのだろう。
世界が根本から揺らぎ、足元の不安定さを知り。
現実と虚構が、過去と未来が、私と物語が、混ざりあい溶けあい、ひとつになっていくような引力を感じながら。
でも今いる私には、今いる世界のことしかわからないから、別の世界に落っこちないように、息を飲んでページをめくる。
そんなスリルに満ちた読み心地が、好きです。
どの世界の直実と瑠璃も、生きて幸せになるであろう物語の終わりは、じんわりと染みました。