今回は、村上春樹さんの小説に挑戦です。
村上春樹作品も、たくさんありすぎて。
おまけに、「読んだことはないのにタイトルは昔から知っている」名品揃いで。
重松清さんの棚の前に立ったときと同じように、直感で手を伸ばすことができずに、かなり躊躇していたのですが…。
迷いに迷って、とりあえず最初の1ページずつを開き、「あまり怖くなさそうで、中ではわかりやすそう」なこちらにしました。
――結論から言えば、決してわかりやすくはなかったけれど、強い中毒性がありました。
昔読んだときの印象と同じで、語られている言葉や、物語の構造が難解だというわけではないんです。
ただ、物語に入り込んで共感することは、私にはとても難しい。
抽象的だからかな。
実際、この本について解説しろと言われても、「カラスと呼ばれる少年」「予言」「夢」「入り口」といった要素を、うまく言葉にできる気がしません。
でも、わからないし説明できないのに、おもしろいんです。
本を閉じればすぐに現実に戻ってこられるのですが、読んでいる間はなかなかやめられません。
本の中は、例えるなら眠りの間に見る夢に似ています。
不可解な物事でも、何の疑いもなく、そのまま受け入れて、味わってしまう。
そこには、私の世界では創造し得ない圧倒的な物語があり。
近づいた者だけが感じられる、村上春樹の息づかいがある。
危険だとわかっていながら、甘い毒を体に染み込ませていくような。
村上春樹の世界の魅力は、この中毒性にあるのかもしれないな、と思いました。