祖母の思い出

「お母さんは温泉に行ったら、3回はお風呂に入るよ」

「えー! 3回も!?」

と子どもたちとしゃべっていて、大好きだった母方の祖母を思い出しました。

孫たちは「ちいさいおばあちゃん」と呼んでいた、小柄で可愛らしくて、優しいおばあちゃん。

――今になってふり返ると、ただ優しいだけではない、強さを持った人だったのだろうけれど。

もう亡くなってしまい、話せないのが残念です。

私がまだ小学生の頃、一緒に温泉に泊まりに行ったとき、同じ会話を交わしました。

「温泉に行ったら、3回入るんだよ」

「えー、なんで?」

「温泉の記号は、煙が3本あるでしょう。だから、3回入るんだよ」

なるほど! とすっかり感心した私は、それ以来、温泉宿では祖母と一緒に3回入浴する習慣がついたのでした。

ただ、この話は、祖母以外の人からは聞いたことがないんです。

どこ由来かもわからないし、もしかしたらジョークだったのかもしれません。

けれども私は、温泉に行けば今でも、教えられたとおりに3回入ります。

そのたびに、大好きなおばあちゃんを思い出せるから、幸せな習慣なのです。

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