むすこが小学生になった。
実に大きくなったようで、眠る顔がまだ幼い。
まるまるとした、ほっぺ。
薄く開いたくちびるから「ふぅん」と、動物の赤ちゃんみたいな寝息。
ただそれだけの、なんでもない一瞬。
薄暗いモノクロの部屋のなかで、そこだけがカラー写真のように鮮やかだ。
なんでもない暮らしのひと切れを、繋いでいけたらいいのにな。
そんなふうに、ながく文章がかけたらいいのにな。
むすこの可愛らしさ。または成長。
母としてのわたしの、愛情のかたち。
なににだって繋げられるような気がするのに、
なににも繋がらないまま、
いまここにいる、むすこだけを見ている。
文章を、ひと切れ。
いちど刃をいれたら、野菜だってお肉だってケーキだって、
いのちの鮮度は、どんどん失われていく。
手ざわりも、温度もそのままに、
物語にはならない、ひと切れの文章を、
それでも置いておきたくて。
