今日は、久しぶりに小説を読んだので、その感想です!
【シュガータイム(小川洋子)】
不思議な小説でした。なんだか“ざわざわする”読後感なんです。
感想を書き残そうと思うのって、普段は「おもしろかった!」「感動した!」という、
心が大きく揺さぶられて、本を閉じたあとの満足感に浸っているときなのだけれど。
このお話は、落ち着かない静けさが、ずっと残っています。
学生時代に、教科書で梶井基次郎の「檸檬」を、初めて読んだときに似た感覚です。
読んでいると、わけのわからない内側の揺れを感じるのに、
冷静になって考えてみたら、起きている出来事は、いたってシンプルだった…みたいな。
昔、同じ小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読んだときは、こんな感じはしなかったのに、不思議でした。
文庫版だったので、巻末に林真理子さんの解説が書かれていたのですが、まさに言い得て妙で!
一部、抜粋させていただくと、
小川さんの本を読んでいると、常に奇妙な胸騒ぎにとらわれる。それは自分がいったいどこへ連れていかれるのだろうかという思いである。
いわく、小川さんの本は、すべてリアルに見えるように設定されていて、
読者はそこに安定して読み進めていくうちに、いつのまにか違った方向へ走らされていて、
こんなはずではない、という思いで胸の動悸が早くなる。それは不安といってもよい感情である。
私が感じた“ざわざわ”の正体が、見事に表現されています!
そうして不思議な場所へ連れて行かれたはずだったのに、最後の「シュガータイム」の台詞で、
とってつけたような現実に引き戻されて、よけいにざわざわしたんです。
どうにも釈然としない。これも計算されて書かれているのだとしたら、すごいなあ。
現代ものなのに、気持ちは異世界に迷い込んだような。
目の前に見えているのは、リアルな現実のはずなのに、手を伸ばすと心もとない感触で、不安になるような。
新しい系統の、“なんだか気になる”本でした。