夢見せバクのおまじない(萩原弓佳)

息子が借りてきてくれた本の、2冊目。

(1冊目はこちら)

「これはお母さん、喜ぶと思うよ!
ほら、絵がないからね! 字がいっぱい!
たくさん読みたいときに、おすすめだよ!」

得意げに渡してくれました。
内容じゃなくて、字の量で選んでくるあたりが、可愛らしい息子です(笑)。

【夢見せバクのおまじない(萩原弓佳)】

確かに、挿絵はなかった!
でも、1話が5分ぐらいで読める、連作ショートストーリーなので、
文字量のわりに、読みやすい本なのではないかな。

同じ学校に通う、小学6年生の子どもたち9人が、
それぞれに悩みを抱えて、眠れぬ夜を迎えるのですが、
おまじないで現れたバクの夢で、行動の糸口を見つけ出していきます。

夢を見て、解決しました。
という物語ではありません。

どの子も例外なく、
「解決するために、どうするか」
のヒントを得て、夢からさめたあと、自身で動き始めるんです。

それが、すごくいいなあって思います。
読後感も爽やかです。

大人にも通じる深い言葉が、たくさんあるのですよ。

「人に笑われても、バカにされているって感じないぞ」
「別に悪いことはしていない。他人の目なんて気にしないでおこう」

「絶対にやってはいけないことは、他人の秘密の重さを勝手に推し量ることだ」

「魔法少女の適性ってなんなんですか?」
「自分で決められること、だよ」

夢の中で語られる言葉に、
ああそうだよなあ…って、深くうなずきました。

特に最後の、魔法少女になりたい夢の話では、この続きに、

「本当に魔法少女になりたければね、早くなりたいから、こっちへ来るんだ。
格好なんて二の次だからね。
でもね、その格好に憧れているだけだと、決められないんだよ。
そうして時間いっぱい、あそこでウロウロしてしまう」

という台詞があって。
これ、大人になった私たちにも、日常にあることなんですよね。

たとえば、作家になろう! と考えたときに、
「まずは勉強してから、世に出さなきゃ」
と、文章術や編集技術、創作のノウハウを学ぶこと、あると思うんです。

学び自体は大事なんだけど、実際に文章を書いていかなければ、
どんな知識や技術を持っていても、世に出ることはありえない。

そして、学びには終わりがないから、
自分で不完全だと感じていても、どこかで外に出す、と決めなければならない。

本当に作家になりたければ、とにもかくにも書いて、発信するでしょう。
だけど、作家という響きや雰囲気に憧れているだけだったら、
いつまでも「こんな文章でいいんだろうか…」と迷って、出せないままなんじゃないかな。 

起業したい、とか、
海外で暮らしてみたい、とか、
どんなことであれ、同じだと思います。
目的に向かってまっすぐに動く決断を、自分でしなければならない。

念入りに準備をすることと、迷って動けなくなることとは、まったく違う。
そんな気づきも、わかりやすく体験できる1冊です。

児童書、深くておもしろいです。

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