【エッセイ】川は、音楽でできている

雨が降った翌朝には、秋の晴れ間が元気に顔を出していた。
いつも淀んでいる小川が、水かさが増えたため、さらさらと流れている。

さらさらと…とは言ったものの、本当に耳に音が届いているわけではない。
ただ、聴こえる気がするだけ。
滑らかに音階をつなぐ、ピアノのように。

流れゆく川面は、小さくて細かい波のひだが、どこまでも続いてゆく。
そのひだに太陽が反射して、きらきら、ちらちらと光を散らす。
響きあうウィンドチャイムの音みたいだ。

ピアノとウィンドチャイム。
繊細で、やさしいメロディ。

川の流れには、音楽がある。

今朝のように、ホテルのカフェで静かに流れるクラシックの日もあれば、
先だっての大雨の日は、情熱的にコンガとボンゴが打ち鳴らされる中、
ずっしりとチューバの音色が底を這っていた。

川は、音楽でできている。
その流れを、じっと見つめていると、からだを揺らしたくなる。

川にしか聴こえない音楽を奏でながら、
地球を流れ続けている。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする