タンザナイトの石言葉(小手鞠るい)

詩画集みたいな小説でした。

作中に、ご自身の書かれた詩が出てくるのは、小手鞠るいさんならではですね。
いや、この場合は、川滝かおりさんと言うべきなのか。

詩画集みたいな。宝石の描かれた静物画みたいな。
それこそ、作中に出てくる、宝石図鑑みたいな。
そんなふうに感じるのは、物語が現在進行形になるまでに、時間があるからかもしれないな。

キャラクターたちの生きる世界は、動いているんだけれども。
宝石という”時空を超えて、今も存在している”ものを通しているので、
わたしたちの人生の大きな変革でさえも、長い長い時空間の前では、
ちいさな揺らぎにしか見えなくなる感覚です。

その静けさの中で。

ぼくひとりのために、ぼくという読者のために書いてくれた、
彼女が一生に一作だけ書き残した「作品」なのだ。

ノートに言葉を書きつけてゆく、彼女のペンの音が聞こえるような気がしました。

現在の彼の時間が、人生が、ゆっくりと動き出すのを見ながら。
時空を超えて、人の止まった時間を動かすのは、やっぱり人なんだなあ…。
なんて思った、タンザナイトの石言葉。

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