家族で、いちばん無口な義父。
女が強い義家族の中でそうなったのか、もともとの性格なのかはわかりません。
あまりしゃべらないけれど、私を可愛がってくれていることは、よく伝わってきます。
まだ子どもたちが小さい頃、お世話に追われて、私だけ遅い食事を終え、ふうっと息をついていたとき。
黙って、家族分の食器を洗ってくれました。
またあるときは、義家族との関係に悩む私に、ぽつぽつと昔の話をしてくれたこともあります。
婿養子に入った義父は、立場が近いこともあるのか、私を労ってくれているのがわかりました。
「できることはするよ、できないことはできない」
そう言い切る人ですが、子どもたちをお風呂に入れたり、隣でゲームをさせてくれたり、私が困って呼ぶと助けてくれたり。
いい距離感で、家族でいてくれます。
再婚で来た私に「息子がそれも含めて選んだんだから、負い目を感じる必要はないし、遠慮しなくていい」と、
子どもにも「血は関係ない、わしの孫だ」と、言葉にしてくれたのも、義父でした。
クリスマスやホワイトデーには、
「いつも子どもらばっかりやからな。たまには自分の好きなもん買い」
そっとお小遣いをくれたことも。
義父について、周りから、いろんな噂や評価を聞かされることはあります。
たぶん、表立って積極的に出ていくタイプではないのだろうし、器用に人とつきあう感じでもないけれど。
その朴訥とした優しさが、私には染みます。
過去や周りがどうであれ、目の前にいる人を、大切な父だと思う気持ちは間違いなく。
私が感じたもの、信じたものを、大事にしようと思わせてくれる存在でもあるのです。