初めての作家さんです。
薫が4歳ちょっと前の頃から現在までの、約20年間の日々の喜びや悲しみが、淡々と語られていきます。
実はかなり悲劇や不幸にも見舞われているのですが、それすらもヴェールがかかった、静かで淡い水彩画のよう。
ラストの、家族でサクラを病院に連れていくところで、ようやく物語が現実味を帯びてきました。
生きるって、滑稽で哀しくて、あったかい。
先日読んだ梨木香歩さん が、とろりと口に広がる、濃厚なアルコールとするなら。
こちらは、さらさらと喉を流れていく、ミネラルウォーターみたいな小説です。
最後の一行まで読み終えて、自分の日常が愛おしくなり、そっと本を閉じました。