子どもの頃に見た、レストランのショーウィンドウのサンプルを思い出す、おいしそうな食べ物のイラストと。
日本人以上に日本人らしい、おじいさんおばあさんの表情に惹かれました。
肩や腰や膝の曲がり具合、頬や口のしわ、つま先が内を向くおばあさんと、外を向くおじいさん…。
いるいる! あるある!
思わず手を叩きたくなるような「おとしより」がいっぱいでした。
大姑に苦労している身としては、純粋に「いいな」「素敵」とは言いがたいのですが(笑)。
ひと癖ありそうな雰囲気も含めて、日本の老人が魅力的に描かれています。
レトロな喫茶店にこそ、あまりなじみはないけれど、そこにいる「おとしより」は、確かに知っている。
ちょっぴり遠くて懐かしい、そんな空気が満ちている1冊です。
失われつつある暮らしの風景を描きながら、著者はこう語ります。
昭和から令和までを生きてきた80〜90代のお年寄たちは、この国の目まぐるしい変化を目の当たりにしてきた歴史の証人で、彼らより若い世代とのギャップはとても大きい。
改めて言葉にされると、世代間の理解が成り立たない物事があることを、しみじみと受け入れられる気がします。
そして、時代が変わりゆく中で、
それでも、物事の終わりや喪失を受け入れる覚悟を常に持っていなければならない。
そこに存在していたものが、別の何かや、新しい現実に場所を譲ることも納得しておかなければならない。たとえそれが、自分の考えとは違っていても。
ある意味それは、私たちが、少しずつ出口の方に押しやられていくということなのだ。
私自身もまた、そうして老いてゆく心構えが必要なのだと思いました。
――でも、こんなふうに描いてもらえる「おとしより」になれるのなら、それもまた楽しそう!