【noteエッセイ】追い抜いてゆく

「おかあさん、あそぼうよ!」

そう呼んでくれる子どもたちと、本気で勝負して負けるようになったのは、いつからだろう。

テレビゲームは、いわずもがな子どもの勝利だ。

走るのも、ボール遊びも、子どものほうが上手になった。

オセロや将棋は、ほぼ負ける。

カードゲームやすごろくは、運がよければ勝てるかな。

上の子たちには、靴のサイズも抜かされた。

身長も、もうすぐ私を越えるだろう。

ずっとおんぶして抱っこして育ててきた赤ちゃんが、今では私をおんぶしてくれるほど力持ちの男子になった。

私は年をとり、老いる。

子どもは年を重ね、私を軽々と追い抜いてゆく。

子どもの頃、抜かれてばかりのマラソンは大嫌いだった。

みんなの背中を見て追いかけるばかりの時間が、とても苦しかった。

今、子どもたちが私を追い抜いてゆく瞬間は、実に爽快だ。

その背中を見守りながら、私の速さでゆっくり歩く時間は、穏やかな幸せに満ちている。

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