桜の「いとをかし」

今年は桜の季節が早かったです。

私の住んでいるところでは、すっかり葉桜になりました。

【桜の「いとをかし」】

清少納言の枕草子で「とても趣がある」と習う古語。

桜は日本の「いとをかし」っぽさが詰まっている花だなあ、と思います。

枝先の空気をほんわりとピンクに染める蕾から、春爛漫の満開、そして風にのって花びらを散らすまで。

どの時期を切り取っても、絵になるのがすごい。

その中で、個人的に「いとをかし」なのは、お天気に恵まれた、散り始めの季節です。

柔らかな風にのって、無数の花びらが舞う、フラワーシャワーのような風景は、すごく好きです。

散りゆく花びらには、どんな音が似合うんだろう。

はらはら。さらさら。ほとりほとり。

個人的には、さ行やは行の、空気が抜けてゆく音が似合うかなあ。

その木々の下には、たいてい幸せそうな人たちや、花びらを捕まえようと嬉しそうな子どもたちが、セットになっています。

温かい気持ちになる風景の、目の前のすべての物事が「祝福されている」雰囲気が好きです。

自分がどんなに落ち込んでいても、どうしようもなくても、私もその中に入れてもらえるような気がして。

そうしたら、今より少しだけ、美しいものになれそうな気がして。

散りぎわの桜が、文字どおり生命をかけて生み出してくれた美しさを、そっと分けてくれているようです。

この「命の言祝ぎ」が、私には「いとをかし」だなあと思います。

#同じ生命がけでも

#蝉には感じられない

#人それぞれの感覚は不思議

桜が散るのを見ると、木の下へ駆けていきたくなるのに、ふと少し手前で立ち止まります。

そうして、目の前の祝福を目に焼きつけてから、私も仲間に入ります。

日本に生まれ育ってよかったな、と思う瞬間です。 

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