子どもの頃から、冬といえば雪が降る土地に住んでいます。
灰色の空と、水気を含んだ雪は、お世辞にも快適とは言えず、からりと晴れた冬空や、パウダースノーに憧れていたけれど。
改めて考えると、この土地ならではの、好きな雪の形があるんですよね。
まず、積もり方。
まだ水分の少ない、新雪がいいです。
積もりたての、誰も歩いていない雪を、きゅっと踏むのが好き。
それから、庭木にこんもりと、まあるく積もった雪は、アイスクリームみたいで好き。
遠くの山に、まばらに積もっているのも、粉砂糖をふりかけたお菓子みたいで、好き。
降り方にも、好みがあります。
風があまりない日のほうがいい。
親指の先ほどの大きさの雪片が、ふわり、ひらりと、絶え間なく降りてきて、静かに積もっていくのが好き。
吹雪やみぞれじゃなくて、桜の花びらみたいみたいな速さで、しんしんと落ちていくのがいい。
空を見上げると、目の前に次々と雪片が迫ってきて、上から下に降っているはずなのに、いつの間にか自分が空に吸い込まれそうになるような感覚が好き。
これは青空じゃだめで、先の見えない灰色の空だからこそ生きる浮遊感なんです。
――こうしてみると、あたり前にしか感じていなかった冬の雪にも、ちゃんと「好き」があって。
むしろ、自分の原風景でもあるんですね。
子どもと一緒に、久しぶりに雪を眺めて、思い出すことができました。