本好き友が貸してくれました!
【みかんとひよどり(近藤史恵)】
たくさん小説や漫画を読む友達なのですが、世の中の小説と漫画は数多あるので、貸し借りの中身が被ったことは、まだありません。
で、彼女の選書は、私の好みを外さない!
ときどきお互いに、届けた本が「これ、読みたいリストに入れてたやつ!」なんてシンクロするぐらい、信頼できる選書です。
#もはやオーダーメイド司書
そんな友達から借りた一冊、わくわくと読みました。
「うわー、私もジビエ食べてみたい!」
「えっ、ここで急展開!?」
などなど、お料理エンタメと、人間ドラマと、ちょっぴりの謎も含みながらの楽しみがあるのだけれど、
いちばん惹き込まれたのは“命”です。
命の描写が、限りなく“自然”であることに、心が揺さぶられます。
静謐で、荒々しい。美しくて、哀しい。
むき出しの生命がそこにあって、もう目をそらせなくなります。
どうしてこんなに、体の内側を直接揺さぶられるような衝撃を感じるのだろう。
文庫版解説に書かれていた言葉が、その答えを秀逸に表現していました。
“命を等しく見るなら、そこに矛盾が生まれる。”
“矛盾は、どこまで突き詰めても矛盾のままだ。しかし考え続けなければいけない。”
作者の手で見事に料理されて、突きつけられた矛盾を目の当たりにして、見なかったことにはできなくなるんですね。
#深い!
ところで…この読感、どこかで味わったことがある気がするな。
作者さんにも見覚えがあるな。
と思って、読書記録をさかのぼったら、近藤史恵さんの本、3年前にも読んでいました!
#どうりで!
娘が図書館で借りてきた「あなたに贈るキス」という、児童文学でした。
これも、すごくおもしろかったんです。
あらすじを抜粋すると、
“感染から数週間で死に至る、その驚異的なウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。
昔は愛情を示すとされたその行為は禁じられ、 封印されたはずだった。
外界から隔絶され、純潔を尊ぶ全寮制の学園、リセ・アルビュス。
一人の女生徒の死をきっかけに、不穏な噂がささやかれはじめる。
彼女の死は、あの病によるものらしい、と。
学園は静かな衝撃に包まれた。
不安と疑いが増殖する中、風変わりな犯人探しが始まった……。”
これをちょうど、新型コロナウイルスの流行期に読んでいたんですね。
特定の疾病をモチーフに描かれているわけではないのですが、エイズや肝炎などの問題を経てのコロナ禍の真っ最中で。
少女たちの心と、世間の価値観と、謎解きとのハーモニーが、鋭く世界を刺し貫くような。
やはり、静謐で荒々しく、美しくて哀しい、と思ったのでした。
2冊読んで、同じように感じて、読書を楽しんだということは、
近藤史恵さんの物語は、もしかしたら私の好みに合うのかもしれません。
ほかの著書も、今度読んでみようかな。