『風が強く吹いている』に引き続き、三浦しをんさん!
【舟を編む(三浦しをん)】
新しい辞書を作る、辞書編集部の面々の物語です。
前回の作品には、駅伝という、スポーツならではの情熱がありましたが。
この辞書編纂も、熱いです!
気の遠くなるような歳月をかけて、辞書を編み。
“移ろいながらも揺らがぬ言葉の根本の意味”を、どこまでも追求する。
終わりのない、途方もない、脈々と受け継がれる、
さながらピラミッド、あるいはサグラダ・ファミリアのような尊さ。
私、学生時代に、国語辞典を読むのが好きだったけれど。
彼らのような深みに届くはずもなく、いや足元にも及ばなかったなあ…!
辞書を編んでゆく過程が、英知と情熱の結晶だな、と思います。
三浦しをんさんは、駅伝でも、辞書編纂でも、
傍からは見えない部分を、極限まで磨き上げた芸術のような美しさで、伝えてくれるんですね。
主人公の脳内で、
“「あがる」と「のぼる」のちがいが明瞭になった”瞬間のシーンなんて、
“木製の東京タワーのごときもの”が、
“うつくしく完璧なバランスで空へ向かってのびていく。”
その表現が、なんて的確で綺麗なんだろう…って感動します。
私が好きだったのは、
“記憶とは言葉”
“なにかを生みだすためには、言葉がいる。”
という一節と、
“言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。
また、そうであらねばならない。”
という台詞です。
本が好き、活字が好きというだけでなく、
「言葉」というものが好きな人には、たまらない小説じゃないかなあ!
辞書を、1ページずつ丁寧に、めくりたくなる本でした。