朝が来る(辻村深月)

子どもを産めなかった佐都子と、子どもを手放さなければならなかったひかり。

どちらの人生も、胸に迫るものがありました。

朝斗を育てる佐都子には、今子どもを育てている自分の思いが重なり。

若くして子どもを産んだひかりには、同じように無知だった昔の私を見ているような、苦さを感じながら。

はっきりと、何かが解決するような話ではないのだけれど。

――でも、最後に、「ああ、朝が来た」と思えたことが、嬉しかったです。

私だって、実際の人生を切り取ってみても、明確なハッピーエンドやバッドエンドになるようなストーリーは、どこにもありません。

ただ、確かに、救われる瞬間はあった。

それからも人生は続いていくし、楽しいことばかりではなかったけれど。

佐都子のように、ひかりのように、「朝が来る」瞬間は、ありました。

彼女たちが、そこに至るまでの葛藤を、丁寧に描いてくれていて、自分のことのように体験できます。

もしかしたら私にもあったかもしれない、別の人生を味わえるのは、小説の醍醐味ですね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする