「かがみの孤城」を気に入った娘のために、作者つながりで選んできた中の1冊です。
娘は、怖い話がまったくだめで、ホラーやサスペンスはもちろん、推理ものも苦手です。
なので、そんな要素がなさそうなものを。
私は「親友の心得」が、まずおもしろかったです。
OLやサラリーマンや公務店主やの話がある中で、高校生という、いちばん若い主人公なのに、結末に救いのないところが。
でも、この主人公・嵐の、どろどろした気持ちの感覚、よくわかるんですね。
自分も、似たようなものを抱えていた。
私はたまたま、救いようのない事態にはならなかっただけ。
沈痛というより重い…何というのがいちばん近いのか、抉られるように読みました。
そして、次の「待ち人の心得」で、救われます。
暗い海の底から、光の見える場所まで、ようやく引き上げてもらったような読後感。
最後に、全編通して読んでの、種明かしや裏側の物語を味わって、本を閉じました。
よかった、おもしろかった。
楽しくて歌い出したくなるような、ではなくて。
ふうっと、深い息を吐いて、ゆっくりと現実世界に戻ってくるような、味わいでした。
それにしても「かがみの孤城」でも思いましたが、描かれている中高生の感覚に、すごく共感します。
私も、確かにこんなふうだった。
著者プロフィールを見て知ったのですが、私と同じ年齢の方なんですね。
歳だけが理由ではないですが、同じ時代の空気感を味わった人なんだな、と思うと、描かれているものの近しさが、少しだけわかるような気がしました。