田んぼに、なみなみと水が漲る五月。
歩く道沿いの水面には、今日のやわらかな空が映っていた。
おひさまの光を受けて、きらきら光る青い世界に、植わったばかりの薄緑の稲が、ちょんちょんと規則正しく立っている。
可愛らしい姿だったので、足を止めて眺めた。
夏には濃い緑がみっしりと伸びるけれども、今はまだおぼつかない若さを感じる。
君たちは、これからどんどん大きくなるんだ。
生まれたばかりの生き物を見ている気持ちになった。
風が吹き抜ける。
赤ちゃんの髪のように、緑がちいさく揺れた。
命がきらきらしている。
空も風もおひさまも、新しい命を言祝いでいる。
私からも、元気に育ってね、と願いを贈ろう。
田んぼの命たちに、ちいさく手をふり、私は再び歩き出した。